「引っ掛けシーリング用」と記載された照明器具を取り付けるには、対応する配線器具が天井になければいけません。配線器具の取り付けには有資格者による工事が必要です。
ここでは、引っ掛けシーリングとはどのようなものなのかと、それを取り付ける工事をおこなえる資格について、また有資格者が引っ掛けシーリングを取り付ける際の手順や、工事を依頼する業者の探し方などについてご説明します。
目次
工事が必要? 引っ掛けシーリングってどんなもの?
引っ掛けシーリングとは、天井に照明器具を取り付けるための配線器具のことを言います。天井側にソケット(引っ掛けシーリングボディ)が取り付けてあり、そこに照明器具側のプラグ(引っ掛けシーリングキャップ)を差し込むことで、照明器具に電気を供給することができるものです。
引っ掛けシーリングは、照明器具に電気を供給するとともに、照明器具の重さを支える役割も担っています。
引っ掛けシーリングのメリット
天井に照明器具を取り付ける方法には、大きく以下の2つの方法があります。
- 天井裏の配線を照明器具に直接つないで設置する方法(直付け)
- 天井の配線器具に照明器具のプラグを差して設置する方法(引っ掛けシーリング)
天井裏の配線を照明器具に直接取り付ける「直付け」という方法は、電気の配線を扱う作業になるため、電気工事士の資格を持つ人しか行うことができません。
直付けの場合、照明器具を天井に取り付けるときはもちろん、取り外しや交換の際にも有資格者による工事が必要になるのです。
一方、引っ掛けシーリングボディを天井に取り付ける際にも、やはり電気工事士による工事が必要です。
ただし、一度天井に引っ掛けシーリングボディを取り付けてしまえば、そこに照明器具を取り付けたり交換したりするのは、資格を持たない人でも誰にでもできるようになります。
引っ掛けシーリングを天井に取り付ける大きなメリットは、誰でも手軽に照明の付け外しが可能になることだと言えるでしょう。
誰でも取り付けや取り外しができるので、掃除やお手入れのために取り外したり、模様替えで新しい照明器具に取り換えたりが容易です。
引っ掛けシーリングのデメリット
引っ掛けシーリングを取り付けるデメリットはあまりありません。あえて挙げるとすれば、引っ掛けシーリングに対応していない照明器具は使えません。
引っ掛けシーリングには電源としての役割だけでなく、照明器具の重量を支える役割もあります。一般的に引っ掛けシーリングの耐荷重は3~5kgなので、5kgを上回る重量の照明器具を取り付ける場合、引っ掛けシーリングだけでは取り付けられません。別途ハンガー金具などで支えたり、天井を補強したりする必要が出てきます。
たとえば、大型のシャンデリアやシーリングファンなどは、引っ掛けシーリングだけでは支えられないものも多いです。こうした照明器具は、そもそも引っ掛けシーリングに対応していない(直付けでしか取り付けられない)ケースも少なくありません。
すべての照明器具を取り付けられるわけではないという点は、引っ掛けシーリングのデメリットであると言えるかもしれませんね。
引っ掛けシーリングの取り付けには「電気工事士」の資格が必要!
先ほどもお伝えしたとおり、引っ掛けシーリングボディを天井に取り付ける際には、「電気工事士」の資格が必要です。電気工事士とはどのような資格なのでしょうか? 概要をご紹介します。
電気工事に不備があると、漏電や発火などのトラブルが起こる可能性があります。これらのトラブルは火災などに発展することもあり、非常に危険です。
このような危険を防ぐため、電気工事をおこなう人は専門的な知識と技能を持っている必要があります。電気工事に従事するために認められる国家資格が「電気工事士」です。
電気工事士には「第一種電気工事士」と「第二種電気工事士」があります。第一種電気工事士と第二種電気工事士の従事できる業務範囲は電力により区分され、第一種電気工事士のほうがより幅広い電気工事に従事可能です。
ビルや商業施設、工場などでの電気工事に従事できるのが第一種電気工事士、一般住宅や小規模な店舗などでの電気工事に従事できるのが第二種電気工事士だと言えます。
引っ掛けシーリングの取り付け工事は、第一種電気工事士、第二種電気工事士いずれもおこなうことができる作業です。
電気工事士の資格はどうすれば取れる?
電気工事士の資格を取得するには、国家試験に合格した後に都道府県知事から免状を交付してもらう必要があります。
第一種、第二種ともに、資格試験を受験するための条件はありません。年齢や性別、学歴などに関係なく誰でも受験することが可能です。ただし、第一種電気工事士の免状を得るには、電気工事の実務経験が必要になります。
このため、無資格から電気工事士資格の取得を目指す場合、まずは第二種電気工事士を取得するのが一般的です。
第二種電気工事士資格試験は、上期試験と下期試験の年2回実施されます。試験はマークシートによる択一方式の学科試験と、学科試験の合格者が受検できる技能試験に分かれています。
第二種電気工事士試験の場合、学科試験の合格率は60%前後、技能試験の合格率は70%前後となっており、国家試験の中では比較的合格率の高い試験だと言えます。
引っ掛けシーリングの取り付け工事の手順とは
天井に直付けされている照明をはずして、引っ掛けシーリングを取り付ける場合、具体的にどのような手順で工事を行うのかを簡単にご説明します。 先ほどからお伝えしているとおり、家庭内であっても引っ掛けシーリングボディを天井に取り付ける作業を行うには電気工事士の資格が必要です。資格をお持ちでない場合は、必ず専門業者に工事を依頼しましょう。
大学や短大、高等専門学校などが電気系や工業系の学科だった方の場合、学校で電気工事士の資格を取っているケースもあるかと思います。そうした理由で資格をお持ちの方が、ご自宅の天井の引っ掛けシーリングの取り付けをおこなう場合の参考になさってください。
最初にブレーカーを落としてから、作業を始めましょう。
①天井の照明器具をはずす
まずは現在天井に直付けされている照明器具を取り外します。照明器具のカバーを取り外し、電線の接続を外しましょう。電線が外れたら、照明器具を天井から取り外します。ビス留めを外すときは、器具が落下しないようしっかりと下から支えながら行いましょう。
②天井の電線を加工、カットする
天井から出ている電線を、引っ掛けシーリングを取り付けるための長さにカットします。ケーブルの外側の被覆をカッターなどで剥いだ後、白と黒の電線の被覆を剥いで電線の長さをカットします。取り付ける引っ掛けシーリングのゲージを目安に電線の長さを決めましょう。
③引っ掛けシーリングに電線を接続する
天井の電線を引っ掛けシーリングボディに接続します。引っ掛けシーリングの「N」と書いてあるほうに白い電線、何も書いてないほうに黒い電線を差し込みましょう。抜けないようにしっかりと差し込むことが大切です。
④引っ掛けシーリングボディを天井に取り付ける
電線を接続したら、引っ掛けシーリングボディをまっすぐにして天井にネジで固定します。
引っ掛けシーリングの工事はどこに頼めばいい?
繰り返しになりますが、引っ掛けシーリングを取り付ける作業には電気工事士の資格が必要です。資格を持っていない人が自宅の天井に新たに引っ掛けシーリングを取り付けたい場合、専門業者に依頼する必要があります。以下のような方法で依頼する業者を見つけましょう。
購入店に紹介してもらう
照明器具の販売店の中には、照明器具の購入時に取り付け工事を依頼できるお店が少なくありません。照明器具の購入とあわせて天井に引っ掛けシーリングを取り付けたい場合は、こうしたサービスを利用するのが便利でしょう。
工務店やリフォーム業者に問い合わせてみる
引っ掛けシーリングの取り付け工事は、照明工事の専門業者はもちろん、工務店やリフォーム業者などでも対応してくれるところが多いでしょう。過去にリフォームを依頼したことのある工務店などがあれば、引っ掛けシーリングの取り付け工事を依頼可能か問い合わせてみるのもおすすめです。
ネット検索で探す
GoogleやYahoo!などの検索エンジンで「引っ掛けシーリング」+「工事」+お住まいの地域名などで検索すれば、対応している専門業者がたくさん見つかります。Webサイトをチェックしてみると、その業者の得意分野や大まかな費用感、口コミなどわかることが多いので、業者選びの参考になるはずです。
自分で専門業者を選んで工事を依頼する場合は、何社か候補を見つけて相見積もりを取ってみることをおすすめします。価格だけでなく、見積もり項目の詳しさや担当者の対応の丁寧さなども確認したうえで比較検討すると安心ですよ。
まとめ
引っ掛けシーリングとはどのようなものなのかと、それを取り付ける工事をおこなえる資格について、また有資格者が引っ掛けシーリングを取り付ける際の手順や、工事を依頼する業者の探し方などをご紹介しました。
引っ掛けシーリングボディを新たに天井に取り付ける際は有資格者による工事が必要になりますが、一度取り付けてしまえば誰でも手軽に照明の付け外しができるようになって便利です。照明の購入や交換などの際には、引っ掛けシーリングの取り付けを検討してみることをおすすめします。