2階建てや3階建ての家を建てるとき、階段の位置や形状は住まい全体の間取り計画に大きく影響します。そして階段の位置や形状によって選ぶべき照明も変わってきます。
上階と下階をつなぐ空間ですから、インテリアとしての存在感はもちろん、転倒や転落などの事故を防ぐため、安全性にもしっかりと配慮したいですね。
ここでは、新築やリノベーションで階段を作り替えるときなどに知っておきたい階段プランニングの基本事項と階段の照明を選ぶときのポイント、階段におすすめな照明の種類などをご紹介していきます。
照明選びの前に! 押さえておきたい階段プランニングの基本
階段の照明について考える前に、まずは主な階段の種類や階段全般をプランニングする際に注意すべきポイントなどについて知っておきましょう。
階段の種類と特徴
ひとくちに階段といっても、さまざまな構造のものがあります。一般住宅に設置されることが多い階段の種類と、それぞれの特徴などを見ていきましょう。
直進型階段
直進型階段は、途中で方向が変わることなく文字通りまっすぐに上り下りするタイプの階段です。「直階段」「鉄砲階段」などとも呼ばれます。 下の階から上の階、上の階から下の階を見やすく上り下りがしやすい階段です。シンプルで少ない面積でも作りやすい階段ですが、設置するスペースが狭いと急こう配になりがちなので注意が必要です。
折り返し型階段
折り返し型階段は、途中に踊り場を挟んでコの字型に折り返して進むタイプの階段です。「行って来い階段」と呼ばれることもあります。 踊り場が広く安全性が高いという特徴があります。設置するにはある程度広いスペースが必要になります。
かね折れ型階段
かね折れ型階段は、途中に踊り場を挟んで直角に曲がって進むタイプの階段です。「L字型階段」と呼ばれることもあります。 こちらも踊り場があるので安全性が高いです。階段下の空間を収納などに活用しやすいというメリットもあります。比較的狭い面積で設置することができますが、直進型階段よりは面積が必要です。
カーブ階段
カーブ階段は進行方向へ向かってカーブを描きながら進むタイプの階段です。かね折れ階段や折り返し階段のように直線的に方向転換するのではなく、階段全体でゆるやかに方向が変わっていく作りになっています。 曲線的で優雅な印象になるので、階段をインテリアのアクセントのようにしたい場合に効果的です。折り返し階段やかね折れ型階段に比べて狭い面積での設置が可能です。
らせん階段
支柱をはさんでぐるりとらせん状の円を描いて上り下りするタイプの階段です。狭い面積でも設置しやすく、デザイン性が高いのが特徴です。ただし、回転しながら進む必要があるため、上り下りしづらいと感じる方も少なくありません。荷物を持っての上り下りがしづらいことや掃除が大変なことなど、使いやすさの観点ではデメリットが多いと言えそうです。
階段プランニングで意識するポイント
階段をプランニングする際にはどのような点に気をつける必要があるのでしょうか。押さえておきたいポイントを見ていきましょう。
安全性を重視する
階段は家庭内でも事故が起こりやすい場所の一つです。小さなお子さんや高齢の方だけでなく、健常な大人でもうっかり踏みはずすといった事故が起こることがあります。階段での転倒や転落は大きなケガや死亡につながる危険もあるため、プランニングの際はとにかく安全を最重視することが大切です。
勾配は急すぎずゆるやかなほうが良いですし、踊り場があるほうが安全性が高くなります。手すりや足元のフットライトなどを設置するのもおすすめです。照明選びの際にも、インテリア性だけでなく安全性にもしっかりと注目しましょう。
住まい全体を考えて位置や形を検討する
階段は独立した空間というより、各階からほかの階をつなぐ空間、連続性のある空間であるということができます。
例えば、家族が自然と顔を合わせられるリビング階段が近年人気ですが、リビングの冷暖房効率が悪くなるといったデメリットもあります。
階段の位置や構造を検討する際は、階段単体で考えるのではなく住まい全体の間取り計画の中で最善の位置や形になるように考えるようにしましょう。
大型家具の搬入予定なども考慮して
新築の入居時はもちろん、入居後に新たに家具や家電を買い足したり、買い替えたりする場合もあるでしょう。
ベッドやソファ、冷蔵庫などといった大型の家具や家電を2階に搬入する場合に、階段の幅や構造によっては階段を通すことができない可能性があります。 このような場合、ロープやクレーンなどで吊り上げて窓やベランダから搬入することになり、別途費用がかかってしまうことも……。
大型家具の搬入予定がある場合や、模様替えなどで大型の家具家電を入れ換えることが予想される場合などは、ある程度の広さやゆとりのある構造にしておくことをおすすめします。
階段の照明を考えるときのポイント
階段の照明プランニングの際には、以下のようなポイントを押さえておきましょう。
まぶしすぎもNG! すみずみまでしっかり照らせる照明に
階段のプランニングでは安全性を最重視すべきだとお伝えしました。照明を考える際にも、まずは安全性に配慮することが大切です。 暗くて足元が見づらいのは問題ですが、照明が視界に入ったときに眩しさを感じるほど明るいのも問題です。
すみずみまできちんと照らせる明るさと、まぶしく感じさせないやわらかな明かりを選ぶようにしましょう。
スイッチの位置は動線上に
照明を計画する際、点灯・消灯のためのスイッチの位置についてもしっかりと検討しておきましょう。階段の照明は上階と下階それぞれに必要です。階段を上りきったところや下りきったところからあまり離れた位置にスイッチがあると不便ですし、消し忘れの原因になることもあります。
階段を利用する動線の中で無理なく点灯・消灯できる位置にスイッチを配置するよう計画しましょう。センサー付きのフットライトなど自動で点灯・消灯する照明を使うのもおすすめです。
メンテナンス性を考慮しておく
階段の照明は、通行の邪魔になりにくい位置に設置するケースが多く、普通には手が届かないこともあるかもしれません。しかし、掃除や故障時の対応、電球の交換などといったメンテナンスが必要になることもあるものです。
設置場所や設置する照明の形などを考える際には、メンテナンスの際の方法についても合わせて検討しておきましょう。
視界に入るかどうかを意識して高さを決める
邪魔になりづらいという点では、なるべく高い位置に設置するのが良いといえますが、せっかくデザイン性の高い照明を設置しても、見上げなければまったく視界に入らないという高さではもったいないですよね。
照明を設置する高さを決めるときは、上り下りの際や階段の見える玄関などから、自然に視界に入るかどうかについても意識すると良いでしょう。
階段におすすめな照明の種類と選び方
階段で使用されることの多い照明の種類と、それぞれの照明を階段で使用する場合の注意点などをご紹介します。
ブラケットライト
ブラケットライトとは、壁面に設置するタイプの照明のことを言います。階段の照明にはブラケットライトがよく使用されます。階段照明としてブラケットライトを使う場合、階段の進行に合わせて2か所設置するプランが多いです。
ブラケットライトを選ぶ場合、壁からあまり大きく張り出しているデザインのものは階段には不向きです。上り下りの際に圧迫感を感じやすいですし、家具などを搬入する際にぶつけてしまう危険があるためです。
ブラケットライトは視界に入りやすい照明なので、出幅を意識しつつ、インテリアのテイストに合うデザインのものを選ぶことをおすすめします。
ペンダントライト
ペンダントライトとは、天井からコードやチェーンで吊り下げて設置するタイプの照明のことを言います。階段の縦長の空間にマッチしてインテリアのアクセントになりやすいため、階段の照明として人気のタイプの一つです。
ペンダントライトを階段照明として使う場合、上り下りの邪魔にならない位置に設置して階段全体を照らすのが基本です。デザインも豊富なので、インテリアに合わせて選びましょう。
シャンデリア
シャンデリアとは、複数の光源を持ち、ガラス細工などの装飾で光を拡散させる、装飾性の高い照明のことを言います。ペンダント型やシーリングライト型、スタンド型、ブラケット型などさまざまなタイプがありますが、階段に用いられることが多いのはペンダント型のシャンデリアでしょう。
天井の高い階段や、折り返し型階段、カーブ型階段などの照明に向いています。また、玄関から見える場所にある階段にもおすすめです。
シャンデリアというと大型のものが思い浮かびますが小ぶりなものもあるので、空間の広さなどに合わせて選びましょう。
フットライト
階段には、メインの照明の補助としてフットライト(足元灯)を設置することが多いです。足元を照らすことで段差を見やすくして、踏み外しなどを防いでくれます。
フットライトは夜間に階段を昇降するときなどに特に役立ちます。センサー付きのタイプにすれば自動で点灯・消灯するので安全性をより高めてくれるはずです。
まとめ
新築やリノベーションで階段を作り替えるときに知っておきたい階段プランニングの基本事項と、階段の照明を選ぶときのポイント、階段におすすめな照明の種類などをご紹介しました。
階段は住まいの中でも大きな空間で、その分インテリアに与える影響も大きいと言えます。
安全性をしっかりと確保しつつ、雰囲気に合う照明を選んで素敵な空間にしてくださいね。